■動物園と水族館の教育: SDGs・ポストコロナ社会における現在地 朝岡 幸彦 (編集) 2005年から日本モンキーセンターの教育活動に関わってきましたが、この3年ほど、いろいろなことが大きく変わった時期はありませんでした。 コロナ禍で活動が制限される中、オンラインでの活動など新しい取り組みもたくさん生まれました。 学習指導要領改訂や博物館法改正があり、SDGsにつながるような教育への要請も高まってきました。 そんな中、動物園水族館教育に関わる研究者と実践者が一緒になってつくったのがこの本です。 来園者向けの活動から学校教育まで、展示動物から身近な野生動物まで、対象も取り組みもさまざまですが、たくさんの事例や考察がつまっています。 モンキーセンターからも総合学習に関わる事例を紹介しています。 副題の「現在地」は言い得て妙で、変革期の今だからできた、ホットな1冊です。 学術部 赤見理恵より |
■FRITZ, DER GORILLA Biografie eines faszinierenden Menschenaffen Jenny Von Sperber 著 ニシゴリラのタロウさんのお父様、フリッツは2018年8月にドイツの動物園で55年の生涯を終えました。当時のニュースで、大好きだったラズベリージャムのお菓子にも興味を示さなくなり、動けない状態になったため、安楽死が選択されたと聞き、衝撃を受けたのを覚えています。カメルーンで生まれ、ヨーロッパに渡り、6頭のゴリラの父親となったフリッツ。その数奇な生涯が伝記として一冊の本にまとめられました。 ドイツ人ジャーナリストのジェニーさんからフリッツに関するラジオ特番への出演依頼をいただき、当時アフリカセンターを担当していた坂口さんがインタビューに答えました。息子であるタロウさんのことについて、とても流暢な日本語で坂口さんに質問をしました。「Gori」という章にその時のことが書かれているようです。ドイツ語で書かれているため、私は読むことができないのですが、タロウさんの幼いころの貴重な写真や、フリッツの家系図なども載っているので、それだけで手に取る価値が十分にある一冊です。とはいえ、内容がとても気になります。ドイツ語…勉強しようかな…。 事務部 今井由香より |
■学名の秘密 生き物はどのように名付けられるか スティーヴン・B・ハード 著、上京恵 訳(原書房) これは和文タイトルがいけません(そんな本ばかり紹介している気がしますが)。このタイトルでは分類学の教科書だと思ってしまいます。私も書店で立ち読みしなければ購入しませんでした。元の英文タイトルの「ダーウィンのフジツボ、デヴィッド・ボウイのクモ」を生かすべきでした。 生き物には、リンネが創始した二名法による学名がつけられます。ヒトの学名Homo sapiens[ホモ・サピエンス]もリンネによる命名です。学名の中には人名に由来するものがたくさんあります。学名を捧げられる対象は、偉大な学者、王、著名人、配偶者などバラエティに富んでいます。その中にダーウィンのフジツボやデヴィッド・ボウイのクモもいるというわけです。 本書は分類学の方法論でも、学名をつけられた生物でもなく、学名の由来となった人物とその背景に焦点を当てた、20編のストーリーからなる本です。それぞれの章で取り上げられるテーマはいずれも興味深く、示唆に富んだ知的エンターテインメントになっています。学名が並んでいるところ以外はたいへん読みやすく、すらすらと読了してしまいました。各章は10ページ程度にまとめられているので、枕元に置いて読み進めるのもよいのではないでしょうか。 プロローグとエピローグで取り上げられているベルテネズミキツネザル(Microcebus berthae:本書ではマダムベルテネズミキツネザル)をはじめ、霊長類も数種登場します。 最後に、私が手にしたのは第1刷ですが、種小名の頭文字がちょくちょく大文字になっていたり、ハナアブの挿絵がゴリラのコドモになっていたりするミスが第2刷以降で改善されることを期待します。明らかなミスなので読むのに支障はありませんが、学名を扱う本だけに、厳密であってほしいものです。 |
■いきものづくし ものづくし 6巻 なかの真実(イラスト)ほか 2018年の秋にこの絵本の「さるのかお」のページの監修依頼のメールが届きました。 約500種類いる霊長類の中からどの種を入れるか、 全体的にバランスがとれているかなどの編集さんとのやり取りから始まり、 絵を描かれる作家さんに園内の霊長類たちを案内したり、 描きあがってくるプロの絵に感動しつつ助言をしたり…やっと発売です! なかの真実さんの繊細な霊長類たちはず~っと見てても飽きがきません。 それどころか毛、1本、1本まで描かれた霊長類たちに顔を近づけて見入ってしまいます。 他のページも昆虫や動物の模様などを題材に、ページごとに違う絵描きさんが 美しく、躍動感のある画面構成がされていて見ているだけでその場面を想像し、 楽しめる絵本になっています。 学術部 江藤彩子よりより |
■ファおじさん物語 春と夏 ■ファおじさん物語 秋と冬 岩田道夫 著 名作に出会うきっかけはどこにあるかわかりません。思いもよらない出会いもあります。 今回紹介する名作との出会いはそのタイトルにありました。 「ファおじさん物語」。ファおじさん?ファおじさんと言えばチベットモンキーのザルバ様のことよね? そんなジョークで思わず手に取ったこの一冊が、私の大好きな一冊となりました。 児童文学でありながら、その言葉のひとつひとつがとても繊細で、 ずいぶん大人になってしまった私の心を優しく、柔らかく、ほぐしてくれました。 風と雲と木々がある自然の中で、ゆっくりと流れる時間を疑似体験させてくれているようです。 まるでフランス映画を見ているような世界観もとても素敵でした。 本当に出会えてよかったと思える一冊でした。ぜひ読んでみてください。 事務部 今井由香より |
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■『森林がサルを生んだ―原罪の自然史』 河合雅雄 著 「人類は生物の一種に違いないが、なんと奇妙な存在だろうか。…(中略)…言 うならば人類はサルから源流として受けついできた悪―原罪を、内在していると いうことなのだ。」 今思えば高校生の時、現代文の模試か何かで偶然、この本の一節に出会ったのが この道の始まりでした。生物が好きで生態学とか学びたいなぁと漠然と思ってい た当時、その延長として人類のあり方を考えるという視点は衝撃でした。 今ではたくさんの新しい知見が加わっているので、1979年初版の本書の内容は古 い部分もあります。霊長類学や行動生態学の新しい書籍も合わせて読んでいただ きたいですが、「原罪」という言葉で霊長類の特殊性や人類の両面性を論じた河 合先生の言葉は力強く、戦争や災害などのニュースが多い今だからこそ改めて考 えさせられる内容です。 |
■『超口語訳 方丈記』 濱田浩一郎 著 学生時代に教科書で目にした鴨長明の「方丈記」。 どんな内容のものだったかしっかりと覚えている方は少ないかもしれません。 大人になった今、読み返してみると、 社会の中で人として生きることの苦しさから解放されるためのヒントがたくさんあり、 まるで今を生きる現代人のために書かれたものなのではないかと錯覚するぐらい深く心に刺さります。 時代がどんなに流れても人が思い悩む原因は全く変わらないのかもしれません。 コロナ禍でステイホームを強いられ、不安な毎日を過ごしている今だからこそ読みたい一冊です。 超ネガティブ思考の鴨長明が超ネガティブに書き綴り、超ネガティブ人間なりにたどり着いた希望とは! 著者である濱田浩一郎さんの解釈と言葉のひとつひとつもとても心に沁みます。ぜひ読んでみてくだい! 事務部 今井由香より |
■『今日のモップくん シロガオサキのモップくん観察記』 根本慧 著 自分で書いた本をおすすめ本でご紹介する日がくるとは思わなかったです。 2018年から日本モンキーセンター公式Twitterでほぼ毎日のように続けてきた【今日のモップくん】ツイートが 本という形で後世に残ります。 内容は最初のツイートから2020年12月までのツイートがすべて載っています。 そしてモップくんからシロガオサキについても学べるようになっております。 新宅キュレーターと京都大学霊長類研究所の武さんにも文章を書いていただき、 この1冊にシロガオサキの魅力が閉じ込められています。是非手に取ってお読みいただけたら嬉しいです。 |
■『「色のふしぎ」と不思議な社会』 川端裕人 著 本書、かなり霊長類が登場します! ご存知のとおり霊長類は哺乳類の中でも視覚に頼った動物で、 その多くがヒトと同じようなカラフルな世界を見ています(3色型)。 しかし一部例外も。夜行性のロリスなどと、南米にくらすクモザルやオマキザルなどです。 クモザルやオマキザルは、3色型と2色型の個体が同じ群れの中に混在しているというからオドロキです。 一方、ヒトの色覚もみんな同じではありません。 一昔前は「色盲」「色弱」と区別されたりしましたが、その多様性がどんどん明らかになってきているそう。 もしかしたらその多様性は、進化の中で人類が獲得してきたものかもしれない!? 「サルを知ることはヒトを知ること」のキーワードにぴったりな1冊です。 |
■『絶滅危惧種を喰らう』 秋道智彌、岩崎望 編 「喰らう」ってなかなか刺激的なタイトルですが、本書には幅広い「絶滅危惧種」が登場します。チンパンジーやゴリラ、ゾウやサイなど動物園でおなじみの動物だけでなく、サメ、サケ、ウナギなど水産資源として私たちも利用している動物も。動物園に親しんでいる方なら、後半のチンパンジーやゴリラの話から読み始めてもいいでしょう。しかし多様な動物種のことを考えてみると、動物園で人気の絶滅危惧種と、私たちの身の回りの絶滅危惧種をめぐる問題がつながって見えてきます。 本書のポイントは、動物だけでなく、その動物とともにくらしてきた人々の姿が描かれていることでしょう。現地で活動を重ねてきた執筆陣が書いているからこそ説得力があります。執筆陣が多い(豪華!)ので、それぞれは短めで読みやすいです。テレワークの合間に少しずつ読むのみもピッタリ!? |
■『恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた』 黒鳥 英俊 著 クリスマスも年末年始も人と会うことがはばかられるいま、なんだか人恋しくなっていませんか? そんな時に読んでいただきたい1冊です。 筆者の黒鳥さんは、動物園や大型類人猿に関心のある方なら知らない人はいない元ベテラン飼育員。 本書では主にゴリラ、チンパンジー、オランウータンが紹介されていますが、 長年の経験から語られるエピソードには重みがあります。 さらに、“愛情”について語られた部分には、同じ霊長類に関わる者として、 絶妙だな、と感じずにはいられません。 ヒトに近縁な類人猿を見ていると、つい擬人化して「ヒトと同じだ!」と解釈したくなってしまいます。 しかし彼らには彼らなりの社会があり、愛情の形があります。 それを尊重しつつも、野生とは違う動物園という環境で試行錯誤しながら彼らと関わってきた筆者の姿に、 何よりも類人猿たちへの愛情を感じて、あたたかい気持ちになりました。 堅苦しくなく読みやすいのに、動物福祉や環境エンリッチメントなど、 近年の動物園の変化についても知ることができる点もおススメです。 |
■『日本と世界 おもしろ玩具図鑑』 日本玩具博物館 編 兵庫県姫路市にある日本玩具博物館の館長と学芸員の方が執筆したこの本には、日本、そして世界各地で収集された色とりどりの玩具が紹介されています。その数なんと350点。それぞれに解説が書かれていて読みごたえもたっぷりです。 江戸時代から続く郷土玩具だけでなく、ガンダムのプラモデルやリカちゃん人形のような最近のものまで幅広く紹介されていて、「見たことある」「遊んだことある」というものがでてくるのもページをめくっていて楽しいところです。大阪・住吉の日和見猿のようにモンキーセンターに所蔵されている猿の郷土玩具やゼンマイ人形もいくつも紹介されています。 さて,この中には「犬山でんでん太鼓」という笛と太鼓が合わさったからくり仕掛けの玩具が紹介されています。さすがからくりで有名な犬山の郷土玩具。しかしまだ作られているのでしょうか。城下のあたりを探してみたくなりました。 |
■『マダガスカル島の自然史: 分子系統学が解き明かした巨鳥進化の謎』 長谷川政美 著 10月は世界キツネザルフェスティバルの期間なのでマダガスカルに関する本を紹介! マダガスカルはアフリカ大陸のすぐ東側に位置してる大きな島(日本の本州の約2.6倍)ですが、アフリカ大陸で見られるゾウやライオン、キリンなどが生息しておらず、独特の生態系をしています。 霊長類は曲鼻猿類であるキツネザルのみが生息しており、そのすべてが固有種です。 キツネザルがどこからやってきて進化をしてきたのかはまだ議論中のようですが、哺乳類から植物まで幅広くマダガスカルの生態系の独特さがわかるとても面白い本です。 飼育員 武田康祐より
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■『レムール ―マダガスカルの不思議なサルたち』 淡輪俊 監修、宗近功 編著 今年の10月30日は世界キツネザルの日なのでキツネザルに関する本を紹介! 長年キツネザルの研究を続けている東京農業大学の進化生物学研究所が出版した、日本語では貴重なキツネザル専門の本。 日本ではあまりなじみのないキツネザルが写真で紹介されていたり、過去に当研究所で飼育されていたキツネザル(なんとコクレルシファカの繁殖事例も!)が紹介されていたり、キツネザルの染色体についての話があったりして、とてもコアな1冊です。 本書では“キツネザル”のことを“レムール”と記載しています。 飼育員 武田康祐より
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■『ニホンカモシカ:行動と生態』 落合啓二 著 特別展「カモシカと犬山の野生動物たち」のために読み始めたら、期待以上の感動があった本をご紹介します! まずは表紙をご覧ください。ズラっと並んだカモシカの顔には、それぞれ名前が添えられています。 筆者は青森県下北半島をフィールドにニホンカモシカの長期調査を続け、個体識別をベースにしたていねいな研究を続けられています。出生してから死亡するまで観察されたメスはなんと13頭!群れでくらすニホンザルならいざ知らず、基本的に単独で生活し、行動範囲も広いカモシカでこのような研究をされているのは驚きです。 カモシカの行動や生態が、膨大な観察データや観察例をもとに紹介されているだけでなく、近縁種との比較や最新の研究成果、保全の話題まで、幅広くまとめられています。また、所々に登場する筆者の体験談や私見(?)が、多すぎず少なすぎず適度なスパイスになっていて楽しめます。 ■『カモシカの生活誌―十八歳の夏、僕は初めてアオシシに出会った』 落合啓二 著 上の本がちょっと高いな、と思われた方にはこちらをおすすめします。出版年は少し古いですが、中古を比較的安価に入手できます。上の本がカモシカについてしっかり学べるのに対し、こちらは調査中の体験談や筆者のカモシカに対するまなざしが語られ、とても読みやすいです。オスだと思って名付けたら夏に子どもを連れていてメスだとわかった「タマサブロウ」の話や、調査のための宿探しの話など、筆者の体験を通して、カモシカや下北の自然、人々、野生動物調査の現場などを知ることができます。 |
■『標本の作り方 -自然を記録に残そう』 大阪市立自然史博物館 編著 私にとっての教科書、ともいえる1冊です。私が大学で教わったのはネズミをはじめとする小さな哺乳類の標本の作り方。モンキーセンターにきて、霊長類のサイズの骨格標本をどうつくる?毛皮標本はどうしよう?となったときにまず取り出したのがこの本です。博物館の学芸員が執筆しているので現実に即してすぐに使える1冊です。また、動物だけでなく、植物や岩石など、自然史に関する標本全般を扱っているので、この本があれば「とりあえず標本を作ってみよう」となれます。もちろん本を読んだだけで標本が上手にできるわけではありません。試行錯誤して経験を積むことも必要です。そんな標本づくりの成果は、特別展「カモシカと犬山の野生動物」(2020年10月25日まで)にも展示していますのでそちらもご覧ください。 |
■『鳥の骨格標本図鑑』 川上和人 著、中村利和 写真 ■『鳥の骨探』 松岡廣繁 総指揮 これまで専門外の本をいろいろ取り上げておきながら、骨の本を一冊も紹介しないのは骨屋のくせにいかがなものか、といぶかる向きがあるかもしれません。 理由はいたってシンプルで、霊長類の骨でおなかいっぱいになれるような日本語の本は存在しないからです。 でも、鳥類の骨ならあるんですよ。 2019年発行の『鳥の骨格標本図鑑』は全身骨格の写真集といった趣で、 今をときめく著者による小ネタ満載の軽快なワンポイント解説が楽しめます。 『鳥の骨探』は2009年発行と少し古いですが、より本格的です。 医療を学ぶ学生のバイブル、『骨単』シリーズの版元から出ているだけあって、 タイトルも中身も『骨単』を意識しています。 冒頭の解剖学的な解説や、生態ごとの骨格紹介も楽しめますが、秀逸なのはChapter 3の「各骨の図譜」です。 胸骨だけ、烏口骨だけというように、さまざまな種の同じ骨の写真がずらりと並んだページは見応えがあり、 見くらべていると時を忘れます。鳥の骨を拾ったら(鳥だと判断できる必要はありますが)、 この本を片手に同定作業もできてしまいます。 こうした書籍の霊長類版があれば楽しいのですが、 実現のためには霊長類好きの人口を鳥類好きと同じくらいまで増やさないとだめですかね。 |
■『みんなのかお』 戸田 杏子 著、さとう あきら 写真 ちょっと古い本ですが、子どもから大人まで、さらに動物園通まで楽しめる、おすすめ本です。 構成はいたってシンプル。とにかく、みんなのかおが紹介されています。 見開きぜんぶ、ゴリラだらけ、キリンだらけ、カワウソだらけ、、、。 難しい説明はいっさいないけれど、眺めているだけで、いろいろなことを感じ取ることができるのがおもしろい。 個体名は書かれていませんが、日本モンキーセンターで紹介されているゴリラはもちろんタロウさんですね。 顔が真っ黒!若い! ではチンパンジーは誰だろう? 今だからこそ、そんなことを考えながら眺めてみるのも楽しいです。 |
■『ヤクシマザルを追って』 山極寿一 文、ふいはらのじこ 絵 私がモンキーセンターで学芸員として働きはじめたころのこと(もう15年前!)。 当時外部業者が運営していたお土産屋さんとは別に、学芸員が直接販売していた本がありました。 「聞かれたら出す」という感じの売り方で、まさに”知る人ぞ知る”その本のタイトルは、『ヤクシマザルを追って』。あれ?本書と同じ? 本書は山極寿一博物館長の、2020年6月の新刊です。しかし同じ名前の本が昔ひそかに売られていた!? そのひみつは、本書「あとがき」をご覧ください。 屋久島の西部林道で観察できるサルたちの、しぐさや食べ物、体の特徴などが丁寧に紹介されています。 ふりがながふられているので子どもでも読めますが、内容はどちらかと言うと大人向け。 これを持ってまた屋久島に行けたら最高です。 雑誌「モンキー」の山極館長の連載では、9/1発刊の5巻2号で、 やっと屋久島での調査が始まるところまで話が進みました。こちらもぜひご覧ください。 |
■鷹の師匠、狩りのお時間です! ごまきち 著 みなさんは、「鷹匠」にどんなイメージをもっているでしょう? 鷹を意のままに操ることができる、あるいは鷹に無理やり狩りをさせていると思っている方もいるかもしれません。 この漫画を読んだら、そんなイメージが変わるかと思います。 本書は鷹匠の方が書かれたエッセイで、鷹についてはもちろん、野鳥やその他の野生動物について、鷹匠の目線から書かれています。 同時に猛禽類の飼育の大変さ、共生の難しさについても触れられています。作者の方の鷹をはじめとした野生動物との向き合い方や、 生き物にとっての幸せについて考え、葛藤する姿は、動物園のスタッフとして共感できる部分がたくさんありました。 鷹や鷹狩りについて知るだけでなく、野生動物とヒトとの関わりについて、本書を通じて考えてみませんか? 学術部 阪倉若菜より |
■丁寧な暮らしをする餓鬼 塵芥居士 著 タイトルや表紙のデザインだけ見ると、ただただ面白可笑しい作品のように見えますが、侮るなかれ! この一冊には生きることの苦しさに宗教や文化で戦いを挑んできた人間の滑稽さ、満たされることのない人間活動の残酷さが描かれています。 改めて生き物の生死について、豊かさとはなにか、そして環境問題についても深く考えさせられました。楽しみながら深く考えることができる・・・ 動物園もそんな場所であるべきですね。 とにかく餓鬼(通称ガッキー)のかわいさに、私はメロメロになりました。 ずぼらな私のあこがれです。ぜひ読んで確認してみてください! 事務部 今井由香より |
■『身体の聲 武術から知る古の記憶』 光岡英稔 著 身体は必ず文化に束縛されていて、文化のない身体は存在しない。 たとえ血のつながった祖先であっても、身体文化の断絶は存在する。 武術を修行することは過去の身体文化を追体験することである。 異なる身体文化に触れて初めて、自身が縛られている文化を客体化することができる。 このような知見は文化人類学や身体論でも語られてきたことです。 本書の独自性は、それが武術家の身体実感から語られているところにあると思います。 これまで甲野善紀氏や内田樹氏との対談本はあったのですが、初めて著者自身の言葉でつづられた身体論に、 修行者の端くれとして深く共感するものがありました。 ヒト以外の霊長類はどうでしょう。 私自身、霊長類の骨格や筋肉の構造と運動について学び、考えてきました。 動物の身体構造は、動物の生きる営みと環境との関わりのなかで、進化が作り出したものです。 そうであれば、身体構造が生み出す自然な運動というものが想定できそうです。 それがわかれば、化石から絶滅した動物の運動を復元するのも楽ですよね。 でも実際の動物たちはたくましくて、状況に応じて驚くべき運動の可塑性を見せます。 となると、動物の運動にも生息環境のもたらすアフォーダンスが導く文化的な側面があるといえそうです。 では動物の身体にとって、野生とは、自然とは何なんでしょうね。動物を観察しながら悶々としてしまいます。 そんなこと考えているから論文が書けないんだろうといわれそうですが、 自然科学の手続き自体がヨーロッパ的心身二元論に深く根ざしていることには自覚的でありたいものです。 自然科学の俎上に載らない大事なこともあるのです。 身体の文化性なんて考えたこともなかったという方には、 ■齋藤孝 著『身体感覚を取り戻す 腰・ハラ文化の再生』 をおすすめします。氏の著作は多々あれど、メジャーデビュー作ともいえる本書がもっとも優れて示唆に富んでいると思います。 身体文化の多様性についてのフィールドワーク入門としては、 ■野村雅一 著『身ぶりとしぐさの人類学』 あたりから始めることをおすすめしておきましょう。 もっとディープな世界へ行きたければ、甲野善紀氏や内田樹氏の身体論もよいですし、さらに深遠なる武術の世界へは・・・ 趣味に走りすぎてはいけないのでここらでやめておきます。 |
■『ゴリラのすべて』(廣済堂ベストムック 439) 山極寿一 監修 ゴリラ好き必見!ゴリラ研究の第一人者、山極寿一先生監修のゴリラ本です。 タイトルの通り、ゴリラのありとあらゆる情報が掲載されています。 2020年7月時点の日本国内にいるすべてのゴリラを美しい写真で紹介しています。 国内のゴリラの個体情報や相関図だけでなく、野生のゴリラの生態や野生での現状などについても写真や図解で詳しく書かれています。 もちろん、モンキーセンターのゴリラのタロウさんも登場します。 担当飼育員が語るタロウさんのエピソードや、来園時の若かりしタロウさんの写真など、みどころがたくさんです。 エデュケーター 阪倉若菜より
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■『南米アマゾン土を食う動物たち』(月刊たくさんのふしぎ2020年1月号) 山口大志 文・写真 南米アマゾンの奥深くにある「コルパ」と呼ばれる場所の写真絵本です。ミネラルを含む土を目当てに生きものたちが集まってくるそうです。そこに集まってくるクモザルやホエザル、バク、インコ、ナマケモノなど様々な動物たちが土を食べたり、なめたり、ほかの種と鉢合わせたり、泥だらけになったり、コルパでおきる様子がテンポ良く描かれています。 アマゾンの奥地で起きている野生動物たちの1コマを美しい写真と供にのぞきこんでみてはいかがでしょう。 エデュケーター 江藤彩子より
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■『自然がほほえむとき』 伊沢紘生(著)、 松岡史朗 (写真) ともに野生のニホンザルを追い続けてきた、霊長類研究者の伊沢先生と、動物写真家の松岡さん。このお二人が誘う野生動物の世界は、たしかに「ほほえむ」という言葉がぴったりのように感じます。 ドラマチックに演出された物語ではないけれど、長年の観察の中から語られるニホンザルの姿や自然からの「謎かけ」は奥深く、不思議で魅力的で、どんどん惹き込まれていきます。 エッセイを途中から読んでもいいですし、写真を見るだけでも楽しめます。和綴じの本なのもおもしろいですね。 動物園から一歩踏み出して、フィールドで動物を見たいという方は、ぜひ手に取ってみてください。 |
■『世界自然遺産「屋久島の自然図鑑」』 神崎真貴雄 著 私が屋久島生息地研修に行く際に購入した本です。 屋久島の概要や、登山道の見どころ、距離と標高が描かれたグラフ、所用時間も書かれてあるため、登山道選びの参考にもなります。 図鑑ページは植物、菌類、動物で分かれていて、見られる季節、標高もあります。 そんなに大きくないので、登山時に持って歩き、気になった動植物があったらすぐに調べることができます。 ただ、屋久島は湿度が高いので、カバーをつけておかないと図鑑が湿気でふにゃふにゃなってしまいます。私のも縄文杉コース登山後、ふにゃっとなってしまいました。 エデュケーター 江藤彩子より
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■『つい誰かに教えたくなる人類学63の大疑問』 日本人類学会教育普及委員会 監修、中山一大・市石博 編 たまには自分の専門分野に関係する本も紹介しないといけないですね。 私もメンバーだったことのある、日本人類学会教育普及委員会の企画で生まれた本です。 人類学には、アウストラロピテクスや原人、あるいは縄文人と弥生人のような、古典的な骨のイメージがつきまといがちです。でも人類学は「人類に関する学」ですから、実際には人類に関係していれば何でもよくて、多様な分野の研究が入り乱れる、懐の深い学問です。その幅広い分野の中から63のトピックを選んで編まれた本というわけです。 本書には多くの研究者が協力していますが、執筆者は研究者ではなく、高校などで生物の教鞭を執っている先生たちです。先生たちが専門家に話をきいて、高校生物を履修している生徒のレベルを想定して執筆するという、手の込んだ作りになっています。 高校生物レベルというのが高めのハードルになっているような気がしないでもないですが、突っ込んで知りたいという人には読み応えがあるでしょう。 |
■『9つの森とシファカたち マダガスカルのサルに会いにいく』(月刊たくさんのふしぎ2019年10月号) 島 泰三 (著), 菊谷 詩子 (イラスト) 自分がマダガスカルの土地を歩いてまわり、シファカをはじめ、ワオキツネザルやアイアイ、ネズミキツネザルなどのマダガスカルのサルたちに出会っていくような感覚になる絵本です。 サルだけでなく、サルを囲む昆虫や植物、人々との係わりもお話の中で自然と知ることができます。 紙面まわりにはマダガスカルのトゲトゲの植物、カメレオン、鳥、ヤスデなどのイラストが装飾のように描かれていて、すみずみまで楽しめます。 エデュケーター 江藤彩子より
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■『100年後も見たい 動物園で会える絶滅危惧動物』 ナショナル ジオグラフィック (編集), ジョエル・サートレイ (写真) 表紙がジャイアントパンダなあたり、ちょっと定番すぎるような気がしますが、とにかく写真が美しい! また動物そのものだけでなく、動物園に関する話題がちりばめられているのも“通好み”です。 たとえばボウシテナガザルのページでは「2008年には米国の保全センターと日本モンキーセンターとで個体交換をし…」と、なんとも詳しい情報が。 実は本書、出版当時日本モンキーセンターのキュレーターだった綿貫が監修&一部執筆しました。 といっても日本モンキーセンターの話題だけでなく、広く動物園の役割を考えることができる構成になっています。 |
■『DNA鑑定 犯罪捜査から新種発見、日本人の起源まで』 梅津和夫 著(講談社ブルーバックス) タイトル通りの内容の本です。 いまや生物学といえば分子生物学が全盛で、骨のかたちを研究するマクロ形態学者などは冷遇されて絶滅の危機に瀕しています。 たしかにDNAからはたくさんのことがわかるし、骨の形態にも深く関わるので、骨屋としてもちょこちょこ勉強するわけですが、 「DNAさえ研究すれば何でもわかる」というような自己陶酔感にあふれた本(意外と多い)に出会うと、 「骨を見ないとわからないこともたくさんあるよ」とこぼしたくもなります。 しかし本書はちがいます。DNA鑑定の技術はタイトルの通り幅広い分野に応用できることを紹介すると同時に、 制約や限界についてもあけすけに語られているところに好感がもてます。 ある意味サイエンス以上に間違いの許されない、犯罪捜査や戦没者遺骨の鑑定に携わってきた筆者だからこその冷静なスタンスなのでしょう。 タイトルを読んで興味をもった人にはそのままおすすめできる入門書です。 |
■『動物翻訳家 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー』 片野ゆか 著 「動物」を「翻訳」…。動物の映像にむりやりアテレコを入れるような番組が大嫌いな私は、一瞬購入をためらいました。 でも市民ZOOネットワークのエンリッチメント大賞を元に取材したなら読まなきゃなーと手に取ると… 冒頭の埼玉県こども動物自然公園のフンボルトペンギンのエピソードは、なんと南米チリの生息地を訪れた園長と飼育担当者の場面から始まります。 緑の丘を登り、土に巣穴を掘ってくらすペンギンの姿を見せたい!それでどんな施設ができたのかは、本書を手に取って読んでみてください! 他の3話も飼育員の夢と熱意と動物への敬意にあふれたものばかり。「翻訳」の意味を浅はかに理解していたことを反省しました。文庫化され買いやすくなったのも魅力です♪ |
■『進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語』 千葉聡 著 進化の教科書ではありません。霊長類も出てきません。巻き貝を対象とする進化研究の最前線を活写したエッセイです。 またタイトルと中身が一致しない本ですね。 でも、これが帯に仲野徹先生が書かれているとおり「むっちゃおもろい」のですよ。 巻き貝の、どちらかといえばシンプルな形態や生態から進化のエッセンスが解き明かされていくストーリーを読んでいると、 つくづく霊長類は複雑すぎる研究対象だと思います。そして最前線の研究トピックをすらすらと読ませるこの筆力、嫉妬します。 |
■『ぼくの村がゾウに襲われるわけ。: 野生動物と共存するってどんなこと?』 岩井雪乃 著 動物保護区がつくられたことにより狩猟を禁止され、保護区から追い出された人々がいます。 その結果人と野生動物との関係性が変わり、人を恐れなくなったアフリカゾウは保護区周辺の村を襲うようになってしまいました。 アフリカゾウは絶滅の危機にあり“守らねばならない動物”ですが、そこで暮らす村人にとっては“憎き存在”でもあります。 著者は、村人とともに長期的に暮らした経験があり、実話をもとに村人視点で書かれています。 動物保護区はどのような経緯で作られたのか、なぜ密猟がなくならないのかなど、知れば知るほど “野生動物との共存”という難しい課題についてとても考えさせられる一冊です。 文章がわかりやすく解説も丁寧なため、中学生高校生にも読みやすくなっています。 飼育員 武田康祐より
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■『写真に残された絶滅動物たち最後の記録』 エロル・フラー 著 (鴨志田恵 訳) 絶滅した動物といえば、ドードーやステラーカイギュウ、もっとさかのぼって恐竜などを思い浮かべる方が多いと思いますが、 本書は、生きた個体の写真が残されている、19世紀以降に絶滅した動物を取り上げています。 貴重な写真とともに、その動物がまだ生きていた当時の様子、そして絶滅に至るまでの経緯がつづられています。 確かにかつて地球上に存在していたのに、もう二度とその姿をカメラに収めることはかなわないのだと、まざまざと思い知らされます。 |
■『ヒトはなぜ絵を描くのか――芸術認知科学への招待』 齋藤亜矢 著 霊長類学は、霊長類を研究することで「ヒトとは何か」を考えることを目的のひとつとした学問で、その研究の方法はさまざまです。 この本では、チンパンジーのお絵かきとヒトの子どものお絵かきを比較する研究を通して、進化や成長、発達の視点から「ヒトとは何か」を考えます。 小さなお子様を育てている真っ最中の方、または小さなお孫さんのいる方は、その子の絵とチンパンジーたちの絵を比べてみるとおもしろいかも知れません。 エデュケーター 阪倉若菜より
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■写真集『GREAT AEPS 森にすむ人々』 前川貴行 著 ゴリラやチンパンジーなどの野生大型類人猿の写真集です。 水の中を歩くオランウータン、樹上で遊ぶゴリラのこどもたち、食事中のチンパンジーの親子、パラソルツリー上のボノボなど、息づかいが聞こえてきそうな類人猿の写真ばかりです。 巻末には伊谷園長のコラムもあります。 野生の類人猿たちのくらしをのぞいてみませんか。 エデュケーター 江藤彩子より
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■『つながりあういのち 生き物博士千石センセイ最後のメッセージ』 千石正一 著 テレビ番組でも活躍された動物博士「千石先生」最後の著書です。 なぜ生きものを研究するのか、なぜ自然を守るのか、人へ説明するときの参考にしています。 見た目だけでは理解されにくい生きものたちの本当のすがたを、世間にわかりやすく伝えることを自身の使命としてこられた先生。 この本に詰まったメッセージを、いますでに生きものを好きな我々が率先して引き継ぎ、 できるだけ多くの人々の意識につなげていかねばならないと思っています。 |
■『へんなものみっけ!』 早良朋 著 博物館には「学芸員」がいるものです。モンキーセンターは博物館で、学芸員がいます。 しかし、学芸員が具体的にどんなことをしているのか知らない方や、学芸員は美術館の解説の人と思っている方も多いのではないでしょうか。 この漫画では、自然科学系の学芸員の仕事についてとてもわかりやすく書いてあります。 これを読んだ後は、博物館やその中で働く人への印象が大きく変わっていることでしょう。 モンキーセンターの学芸員も、この本に出てくる人たちに負けず劣らずおもしろい人ばかりですよ! エデュケーター 阪倉若菜より
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■『一日江戸人』 杉浦日向子 著 環境問題がクローズアップされている昨今、地球環境を守る方法がいろいろと提案されていますが、 私が考えた方法はこれ!「そうだ!江戸人になってみよう!」 江戸時代の日本人の生活は、エコで楽しくて、ちゃんとオシャレ! そんな江戸時代の生活や流行が、イラスト満載で紹介されています。 最初から最後までワクワクが止まらない一冊。 私も月一くらいでいいから、江戸人のように暮らしてみたい! 江戸人への憧れが、未来の地球を救う・・・・かも? 事務部 今井由香より
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■『正解は一つじゃない 子育てする動物たち』 斎藤慈子、平石界、久世濃子編 今日は「こどもの日」!ということで子育てに関する1冊を。 よくある“子育て本”だと思って読んではいけません。ママのワンオペ子育てのオランウータン、パパまでミルクを与えるハト、さらには子殺しの話まで、 ヒトの常識からするとありえないような子育てスタイルにびっくり。そう。進化に「ゴール」はなのです。 本書のもう一つの魅力は、執筆者がみんな子育て中の若手研究者だということ。 随所にある「子育てエッセイ」で経験談や苦労話を読むことができて、研究者の素顔にほっこりします。 かく言う私も、サルたちの子育てばかり見てきたせいで、生まれたわが子の未熟さに愕然とした経験が。 さまざまな動物たちの子育てを知ることで、逆にヒトってなんだろう、と考えることもできるのかもしれません。 |
■『人類の祖先はヨーロッパで進化した』 デイヴィッド・R・ビガン 著、野中香方子 翻訳、馬場悠男 監訳・解説 どうしてこんな誤解を招きやすい邦題にしてしまったんでしょうね。人類進化に関心がある人ならば、ピルトダウン人のような胡散臭さを感じてしまいそうです。 しかし本書は怪しい本ではなく、人類が誕生する以前の、類人猿の祖先の進化を扱ったものです。 現生のチンパンジーやゴリラについての本はたくさんあるのに、かれらのルーツを扱った本がないのを不思議に思ったことはありませんか。 その大きな理由の一つは、明確なストーリーを描けるほどの化石証拠がそろっていないから。研究者がサボっているからではありません。 でも、今ある証拠を丹念にたどると、著者の真の主張「アフリカ類人猿の祖先はヨーロッパで進化した」を語ることもできる。 現時点で、これまでに発見されている化石類人猿について日本語で俯瞰できる唯一の書籍です。 なお、中新世の化石類人猿に関わる者の1人として、著者の見解にすべて同意するものではないことも申し添えておきます。 |
■『カラスの教科書』 松原始 著 誰もが知っている身近な鳥・カラスを、研究者が双眼鏡を持って地道に観察しつづけると、誰も知らなかったこんな姿が見えてくるのか、 やっぱり行動観察っておもしろい!と思わせてくれた1冊です。 動物行動の研究者は、「大半の人がさほど気に留めない生きものでも時間に関係なく眺め続ける」という行動をとりますが、 それは生きものを見る視点が少し特殊だからであって、決して“暇人”というわけではないのです。ご理解いただければ幸いです。 |
■『世界で一番美しいサルの図鑑』 京都大学霊長類研究所 編 名前の通り載っている写真はどれもとても美しく、写真を見ているだけでも楽しめます。 霊長類の進化、形態、社会についてもまとめられており、図鑑らしくそれぞれのサルの詳しい説明も書かれています。 モンキーセンターの霊長類図鑑と合わせてみていただくとより詳しく霊長類について知ることができます。 エデュケーター 阪倉若菜より
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■『霊長類図鑑 サルを知ることはヒトを知ること』 日本モンキーセンター 編著 日本モンキーセンターからのおすすめ本といったら、まずはこれ! 前半の「図鑑編」ではスタッフが撮影したとっておきの写真満載で180種以上を 紹介。後半の「図解編」では進化、生態、ヒトとの関わりなど、さまざまな視点 で解説をくわえました。霊長類についてじっくり学ぶことができるだけでなく、 写真をパラパラ眺めているだけでも霊長類の多様性や魅力を実感できる1冊です。 巻末には霊長類全447種の和名リストを掲載! 出版社から直接購入もできます↓↓↓ >>京都通信社の「霊長類図鑑」のページへ (学術部一同より)
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■『野生動物 追いかけて、見つめて知りたい キミのこと』 京都大学野生動物研究センター 編 対象種、注目ポイント、調査地、データの集め方、使用機材…同じ研究はひとつとしてありません。 生きものが多様なのはもちろんのこと、研究者も多様であることがうかがい知れる1冊です。 1研究テーマあたり見開き1ページなので、気になった動物のページからサクッと読めます。 自然・生きものとかかわるさまざまな職業の紹介もあり、「13歳のハローワーク・動物研究者編」としても読めます。 |
■『残酷な進化論: なぜ私たちは「不完全」なのか』 更科功 著 まずは質問。「いちばん進化した生き物は何ですか?」 ヒト、あるいはその他の特定の生物が思い浮かんでしまった人は、ぜひこの本を手にとってください。 進化というのは祖先から受け継いだガラクタをアレンジしてその場しのぎを続けているだけで、理想のゴールを目指しているのではない。 私もレクチャーでよく扱う主題が、さまざまな事例を引いて解説されています。 進化についての素朴な誤解の呪縛から、自分自身を解き放ってみませんか? |
■『イモムシハンドブック』 安田守 著 今からの季節、屋外ではチョウやガなどのイモムシが増えてきます。 地面を一生懸命に移動する姿、枝に擬態している姿、垂直な壁を元気よく移動するシャクトリムシなどを 見かけると成虫になったらどんな姿になるのか気になりますよね。 イモムシの写真一覧が載っているので、種名を知らない人でも写真から簡単に探すことができます。 これを持って庭や公園でみつけたイモムシを調べてみませんか。 エデュケーター 江藤彩子より
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■『新装版 標本の本 京都大学総合博物館の収蔵室から』 村松美賀子・伊藤存 著 博物館の自然史資料を紹介する本は数あれど、編集者と美術作家が紹介する本は(たぶん)なかったはず。 研究者とは違った視線が収蔵室を探索するとき、自然史標本は新たな表情を見せてくれます。 自然を切り取って標本を作って残し、それが再びさまざまにつながっていく、そんな博物館の営みを丁寧に表現しています。 まだ大学院生だった私のフィールドワークの様子も取材してもらいました。 美術作家・伊藤存さんのその時のスケッチとレポートも必見です。 |
■『いのちをつなぐ動物園』 京都市動物園 生き物・学び・研究センター編 京都市動物園について書かれた本でありながら、日本の動物園のあり方まで考えることができる1冊です。 いま日本では、学術研究機関として認められている動物園は京都市動物園と日本モンキーセンターだけ。 動物福祉への取り組みと、それに根差したさまざまな研究、そして生息地とのつながりまで、 京都市動物園の事例に引き込まれて読み進むうちに、あたなの動物園に対するイメージが変わっていることに気がつくかもしれません。 |
※日本の動物園等で飼育されている霊長類の種数は102種類です。(2015年3月31日時点、GAIN調べ。種間雑種その他の分類不明なものは除く。) |