7.タンザニアの人々、そしてシェタニ

  
 ここまで、タンザニアのさまざまな芸術作品をご紹介してきました。
 この特別展に展示している作品はすべて、シェタニアートの金山麻美さんが所蔵されています。
 金山さんは長年、タンザニアに住まわれ、展示している作品たちの作家と交流されてきました。
 このウェブミュージアムの最後に、金山さんにタンザニアの人々、そしてシェタニについてお伺いしてみましょう。 






金山さんはタンザニアに長く暮らされていましたが,生活の中で,あるいは人付き合いの中で,日本と比べて大きく違うところ,逆にほとんど変わらないなと感じたところはありますか?

 タンザニアはダルエスサラームのような大都市でも、知らない人とすれ違う時にけっこう挨拶を交わします。たとえば、以前、わたしが手首の骨を折ってギブスをはめた状態で街を歩いていた時、すれ違う人の3人に1人は「Pole(ポーレ:タンザニアの言葉、スワヒリ語でお大事にの意味)」と声をかけてくれました。びっくりしたけれどうれしくもありました。人と人の距離が近いというか、冷たくないというか、知らない同士でも自然と挨拶やおしゃべりができてしまうところに魅かれます。

 似ているなと思うところは、はっきりと物を言わない、婉曲に伝えようとするところでしょうか。タンザニア人に何かを提案した時に「Siyo nbaya(悪くないね)」と言うから、賛成なのかと思ったら、内心は「気が進まない」と感じてたことが後からわかったりしたことがありました。そういえば、下を向きながら言ってたなと思い返したり。この展示でも使われているタンザニアの女性たちが身に着けるカンガという布にはスワヒリ語の文(ジナ)がプリントされています 。伝えたいメッセージをカンガに託すこともあります。



-タンザニアのおすすめポイントは?タンザニアに行く人にこれだけは見てほしい,というものはありますか?

 タンザニアは、野生動物の宝庫であり、アフリカ最高峰のキリマンジャロ山や、コバルトブルーのインド洋、そこに浮かぶザンジバル島などお勧めのポイントが満載です。

 一番のお勧めはタンザニアでJAPAN TANZANIAツアーズという旅行会社を立ち上げ、30年以上にわたって行ってきた「農村滞在ツアー」です。タンザニアの人々や生活や文化に混ぜてもらいながら、その懐に抱かれながら「生きる」ということを見つめなおせるツアーです。世界がより広がります。



-本展出品の作家と長く交流されている中での思い出,印象的な出来事があれば教えてください.

 マティアス・ナンポカに「今度はどんな彫刻を作るの」と訊いたところ「彫り始める前に木を空にかざすとその姿が見えてきて、あとはひたすらそれを彫るんだ」と。マティアス・ナンポカの工房は彼の家の庭のタマリンド木の木漏れ日が降り注ぐ場所にあるのです。マティアスのシェタニは空から降りてくるんですね!
 タマリンドの木の下のマティアスの工房 (提供:金山さん)


-「シェタニアート」と名前をつけられるくらいの,“金山さんにとっての”シェタニの魅力って何でしょう?

 シェタニはタンザニアのそこここにいるそうです。川の中やバオバブの木やトタン屋根の家の中にも。いたずらしたり、いいことしたり、いろいろみたいです。

 でもナンポカやリランガのシェタニは彼らの中にいるそうです。(空から降ってくることもあるようだけど)

 目に見えないシェタニの姿を彫刻や絵を介して顕在化し、味わってもらうというのが彼らの作品のようです。

 彼らによると、わたしたち、どの人の中にもシェタニはいるそうです。彼らの作品を見ながら自分のシェタニはどんなだろうと考えてみるとドキドキワクワクしてきませんか。わたしたちのシェタニと通じるところがきっとあるんじゃないかと。




金山さんのブログには、タンザニアの魅力やアーティストとの交流録が記されています。
ぜひ、そちらの方も楽しんでください。
  金山さんのブログ「タンザニア徒然草」 https://57631919.at.webry.info/
  JAPAN TANZANIA ツアーズ https://jatatours.wixsite.com/jatatours



日本モンキーセンターではこれまでさまざまな特別展を開催しています。過去の特別展はこちらから。
 




<< 6.タンザニアの布:カンガ
トップ >>