アフリカセンター担当 奥村
先日、チンパンジーのマリリンの引っ越しをおこないました。
以前はアキラとデンスケが暮らす場所にいたのですが、
今はツトム達が暮らす場所に移っています。
木に登るマリリン
リンゴをほおばる
今後はツトム達と一緒に暮らすためお見合いを進めていきます。
マリリンにとってお見合いしやすい環境を考え、時間帯によって(特に夕方)
マルコやマモルをご覧になれない場合があります。
ご容赦ください。
さてさて。
ここからとっても長くなりますので・・・
お時間のある方、読んでいただければ幸いです。
マリリンの移動の経緯についてです。
ここ1年以上に渡り取り組んできた他のチンパンジーの同居と併せてご紹介させていただきます。
~チンパンジーの笑顔や遊びを取り戻したい。ひとりぼっち解消のための同居の試み~
マリリンが屋外運動場から屋内個室のアキラに向かって手を差し伸べる。お見合い用に10センチメートルほど開けられたゲートの隙間からアキラの様子をうかがう。アキラも近づき隙間から、今度はマリリンに向けて手を差し伸べる。マリリンはその手にキスをし、ふたりはお互いに顔を近づけ挨拶。私はマリリンが少し距離をとった所にいるのを確認してから、ゆっくりと屋外運動場へのゲートを開けた。アキラは少し興奮しながら屋外に出るものの、ほどなく落ち着きマリリンを待つ。マリリンは徐々に距離を詰め、アキラに再び挨拶。その後は近づいたり離れたり。アキラが枝を少し揺すって誘うと、マリリンは近づきアキラの足元にキスをした。
私は2007年より飼育員として採用され、ワオキツネザルを1年、アヌビスヒヒを3年、マンドリル・ニシローランドゴリラを4年担当し、昨年2015年よりチンパンジーを主に担当させていただいています。冒頭ではモンキーセンターで暮らすチンパンジー、マリリンとアキラが同居をはじめたときの様子を紹介しました。本来チンパンジーは複雄複雌の群れを形成し、そのなかで様々な社会的交渉を行います。ではモンキーセンターではどうだろうと考えたとき、それぞれが別々に暮らし社会的交渉の機会さえ得られない状況がありました。モンキーセンターでは8個体のチンパンジーが暮らしています。そのうち、昨年までは3個体が単独で暮らしていました。マリリンもそのひとりでした。彼女は2011年に来園し、ツトムというチンパンジー達と一緒に暮らすことになりました。4ヶ月のお見合いを経て同居しましたが、怪我を伴うあらそいを繰り返し、なかなかなじむことができず、2014年8月からはアキラとデンスケが暮らす場所の一室に移動することに。マリリンは相性の問題だけでなく、挨拶の仕方や、餌を食べる順番など、チンパンジーとして他の個体とコミュニケーションをとることが上手でない一面もあるようでした。しかし単独で暮らすことはチンパンジーとしての社会性を失うことにつながります。そこでマリリンが社会交渉を持つため、2015年8月より同居を目的としたお見合いを始めました。
まずは、昼夜一緒に暮らしているアキラとデンスケを一時分け、網越しでマリリンとお見合いをさせ、反応を見てみました。アキラはしきりにディスプレイをし、マリリンも興奮して向かっていきました。それに比べデンスケとは、最初はお互いに距離をとりつつも、次第に網越しでグルーミングなどの接触が見られるようになりました。デンスケとの同居も冒頭のアキラとの同居の手順と同じになりますが、お互いの様子を見ながら進め、2015年10月、マリリンはデンスケと初めて同居ができました。マリリンとデンスケの同居は、初めお互いが接近し挨拶を終えた後はそれぞれで過ごす、というものでした。以後、一日の限られた時間の中ではありますが、同居をはじめてから4ヶ月も経つと、屋外運動場の天井近くで、お互いの手足を引っぱりっこして遊ぶふたりの姿を見ることができるようになりました。とても楽しそうにしていた のが印象的でした。
また、アキラとの関係にも変化が見られました。2016年2月より始めたお見合いでは、マリリンは怖がりながらも徐々にアキラに近づき、挨拶もしっかりとするようになりました。アキラはもともと10年以上にわたりアルファオスとして暮らしてきた個体です。マリリンの行動を見て、少しずつ近づいたりマリリンに向けて頷いたりするようになりました。時折、力を誇示するためや、自らの緊張を振りほどくために、ディスプレイをすることがありました。その後もお見合いを続け、2016年4月に同居できるようになりました。
アキラにあいさつをするマリリン(同居初日)
また、以前は単独であったフジコとジミーも、ふたりで同居ができるようになりました。ふたりはおよそ6年間、網越しではあるものの同居の機会を得られず、それぞれで暮らしていました。 こちらもマリリンたちと同じように、彼女らもお互いにお見合いをし、2015年7月に同居を始めました。遊びがみられたのは3回目の同居。経験豊かなフジコからの誘いでした。初めは1時間ほどだった同居も、徐々に様子を見ながら伸ばしていき、2015年10月からは日中毎日、同居ができるようになりました。ジミーはとても遊び好きで、床をトントン叩いたり、ペタペタ歩いたりして、フジコを誘います。二人でレスリングをしながらパカッと口をあけて笑う。別々に暮らしていては出来なかった行動や笑顔を見ることができました。
今まで一緒に暮らしていなかったチンパンジーたちの同居をおこなうためには、たくさんの時間が必要な場合があります。ただ彼らの新たな一面や、遊んでいる姿、笑顔が見られたとき、本当に小さな一歩ですが前に踏み出せた気がしました。
ここまでが先月までの経緯です。