サリヴァン先生

花粉症との戦いもいよいよ終盤戦となり新年度を迎えた今日この頃。

自分の体よりも大きいランドセルを背負う新小学1年生を見ると内心ヒヤヒヤするのは私だけはないだろう。私も昔は新学期には「今年の担任はどの先生かな」「誰と同じクラスかな」と考えていたものだ。そんな動物とサッカーを愛した純朴少年はモンキーセンター2年生の飼育員となった。

こんにちは。南米館担当の2年目になった高田です。

実は先月の中旬から南米館のいくつかの運動場にこんなものが吊り下げられているのをご存じでしょうか?

短く切った消防ホースにロープを通して吊り下げた

昨年度のおやつ作り体験で参加してくださった皆様に絵を描いていただいた消防ホースフィーダーにロープを通したものだ。この中にエサを隠しておき、サルたちが探し出すという仕組みの用具である。

「エサを隠す」、「探し出す」と言っても意地悪をしているわけではない。簡単に手に入る食物があるにも関わらず、あえて手間をかけないと食べられない食物を選ぶことが、様々な動物で報告されている。食べるまでの行動にも心理的な欲求を満たす必要性を考えなくてはならないのだ。

また南米館で飼育している霊長類はいずれも樹上性の生活様式であるため休むのも食べるのも基本的には木の上で行うのだ。というワケで限られたスペースではあるが、止まり木の上で食べ、食物も探してもらいたいと意気揚々と2月の上旬にフィーダーを設置した。

ところがある個体にだけ予期せぬ事態が起きたのだ。ある個体とは彼のことだ。

シロガオサキ(Pithecia pithecia)モップだ。

シロガオサキ(Pithecia pithecia)♂モップ

何度か消防ホースフィーダーを地面において使った時にはエサをとることができていたので吊り下げ型にしても使えると考えていたのだが、全く手を付けないのだ。位置を変え、中身を変えたのだが手を付けない。それどころか探索する素振りもない。

野生のシロガオサキは森の中で、種子や果物を探し食べているのだが、長年地面におかれたエサ皿から食べていたせいか食べ物を探索するという経験があまりないようだ。これでは消防ホースがただの飾りになってしまう。火の用心の啓蒙活動をしているのではないのだ。

そこから晴れた日の休園日や開園前に私とモップの授業が始まった。目標は3月の猿joy感謝祭までに消防ホースに興味を待たせることだ。期間は約1か月ある。

隠すエサ変えてみたが、反応がない。色々調べてみた。そこで私にはある視点が抜け落ちていた。食物を探し食べるということは生得意的な行動の側面もあるだろうが、学習による行動の側面もあるということだ。

なるほど、私は晴れた休園日にモップが私を見ているタイミングでホースに落花生を入れ取り出し自身の口元に運んだ(安心してください食べはしません)。この動作を何度か繰り返し、私は外へ出る。するとモップはホースを探索し、落花生を取り出しているではないか。

やったぞ。というより「俺はサリヴァン先生か!!」自分の子供より先にサルに食べ物の取り方を教えるなんて(私は独身もちろん子育てをしたことはない)。そんなことを思いながら、これを数日繰り返し、猿joy感謝祭の時には一応興味をフィーダーに示すようにはなった。達成感と共に勝手に霊長類学に小さな点をつけることができたと思っている。

さあ、こうして私のモンキーセンター2年目がスタートするのである。

動物園は子どもを大人にし、大人を紳士・淑女にする。そうなることを願い日々精進するのである。

それでは、日本モンキーセンターで会いましょう!

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