飼育の部屋

トネ(ニホンザル)

リンリン(フランソアルトン)
★☆★コメント★☆★

Waoランド・アジア館担当  名畑より 

 今年も変わらず夏がやってまいりました。ひっきりなしに鳴くクマゼミとキリギリスの声が暑さを充実させ、遮るもののない陽射しを見上げながらため息をつく日々でございます。それでも木陰に入れば、時折吹きすぎてゆく風と、サンコウチョウの軽やかな(ホイホイホイ)という呼びかけに暑さを忘れることもしばしばでございます。

 古来より日本ではあらゆる生き物の声が、季節感の象徴として、自分の心情の代弁者として詩歌や物語を彩ってきました。
 
草野心平という詩人はとりわけカエルの声を多くの詩に残しました。本日はその中の「ごびらつふの獨白」について。まずこの詩はカエル語で書かれています。「るてえる びる もれとりり がいく。 ぐう であとびん むはありんく るてえる。 けえる さみんだ げれげれんで。(後略)」その後に私たちにわかるように「日本語譚」が追記されているのです。「幸福というものはたわいなくつていいものだ。 おれはいま土のなかの靄のような幸福に包まれてゐる。地上の夏の大歓喜の。(後略)」いささか長くなりますので、全文引用は致しかねますが、学生時代この詩に出会ったときの驚愕は今でも鮮明です。そして何か憂鬱なことがあるたびにこの詩の一文が浮かびます。「考へることをしないこと。 素直なこと。 夢をみること。…中略… 悲劇とか痛憤とかそんな道程のことではない。われわれはただたわいない幸福をこそうれしいとする。」なんだか心が軽くなりませんか?
 
このほかにも素晴らしいカエルの詩をたくさん書かれております。今年は「カエル年」ということですので、興味のある方は是非ご覧くださればと存じます。
 
 季節は私たちの各々の事情にかかわらずやってきてそして過ぎてゆきます。今年も夏も心楽しくすごされますように。


ボウズイカ(ヤクニホンザル)

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