飼育の部屋



★☆★コメント★☆★

南米館担当  名畑より 
おりふしの風景ー春に寄せてー
厳しかった冬が嘘のように空気が温み、園内の其処此処に、草花たちがささやかな花を掲げ始めました。それらを観るにつけ、何とはなしに心華やぐような、反面その可憐で健気なさまに、心もとなくなるような心地が致します。▽この季節になると必ず思い返す詩があります。<空は屋根のかなたに/かくも静かにかくも青し。/樹は屋根のかなたに/青き葉を揺する/打仰ぐ空高く御寺の鐘はやはらかに鳴る/打仰ぐ樹の上に鳥はかなしく歌ふ…>ヴェルレーヌ「偶成」です。冬の空ほど厳格ではなく、夏の空ほど苛烈ではなく、秋の空ほど清廉でない穏やかな春の空は、まさにこの詩の空であるようです。▽わたくしがまだ若い頃、この季節は楽しいばかりでした。ゆえにたくさんの詩に詠われる「春の哀しみ」なるものがよく理解できませんでした。歳を重ね、去年の花、一昨年の花、一昨々年の花が自身のなかに積み重なる毎に、朧ながらもわかってきたように思います。▽変わらぬ1日を終え、夜、自分自身と静かに向き合ったとき、「あぁ 今日一日は過ぎ去ってしまった」と不意に思うのです。流れる時間からは決して逃れることはできません。どんなに楽しい時間でもいずれ終$タ
jがやってきます。この時間がずっと続けばいいのに…。しかし、過ぎ去った時間はもう取り戻すことはできないのです。春の哀しみは、わたくしにとって過ぎてゆく時への愛惜です。▽<…君過ぎし日に何をかなせし/君今ここに唯だ嘆く。/語れや君、そもわかき折何をかなせし。>最終章で投げかけられる問いは、居ても立ってもいられないような焦燥感を持って迫ってきます。さらに歳を重ねたとき、わたくしはこの問いに答えられるでしょうか。好きの一念で選び続けた動物の仕事ですが、漫然とその上に胡坐を書き流されてはいないでしょうか。▽春に寄せて様々なことを考えましたが、自身の未熟さを痛感し、たくさんのことをもっと学びたいと思う昨今でございます。▽とりあえず南米館のお掃除をしている時は本当に幸せです。よ?

追記 南米館ホール 「ピグミーだんご」 運がよければ閉園少し前にご覧いただけます。激カワイイので見に来て!ね?

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