おさる獣医師の動物園歳時記

いつもは裏方でサルの診療にあたっている「おさるの獣医師」が
緑豊かな動物園の自然と動物について
感じるままにシャッターをきり 書きとった「動物園歳時記」です。







小学2年生の国語の教科書に「どうぶつ園のじゅうい」(光村図書 上巻 うえだみや著)
という読みものがあります。この地方の小学校ではほとんどの学校で採用されています。
この学習を終えた時季と秋の校外学習の時季が重なることもあって、動物園を訪れる小
学校の中にはこの単元に合せたお話(レクチャー)を聞きたいというリクエストがあります。


日本モンキーセンターでは、学術部員との合同レクチャー(TT:ティーム・ティーチング)の
かたちを採ってお話の機会を設けてきました。約30分間の枠内で前半をキュレーターや
エデュケーターによるサル類の全般的な内容を、後半にわたしが動物園獣医師のお話を
するというスタイルです。授業をつうじて出た質問は事前にもらっておきますが、レクチャ
ー後に出る質問もTTで受けることにしています。本年度は25校、約1,760人の受講があ
りました。


「どうぶつ園のじゅうい」がおこなう朝の仕事に園内の見回りがあります。これは日本モン
キーセンターでも同じです。子どもたちからも「朝、園内を見回りますか?」という質問が
出ます。できるだけその朝に見回ったエピソードを交えて答えるようにしています。たとえ
ばアフリカセンターでは、ニシローランドゴリラのタロウさんが居ます。タロウさんの朝の
風景には写真のような立派なウンチが無いといけません。そしてわたしと交わすいつも
どおりのあいさつと、ガラス越しのアイコンタクトがあります。子どもたちにとって、こうした
具体的な事例をこの場所で、その人から聞くことは、読みものや映像以上のインパクトが
あり、想い出にも残るようです。


実は、この朝の見回りは動物園が落ち着いていないとできません。早朝からの急患対応
があると優先順位はおのずと入れ替わります。動物病院にとっても、園で暮らす動物たち
にとっても、獣医師の朝の見回りがゆっくりとできる日常がもっともありがたいことです。
(2018.12.24.)



 木村直人(日本モンキーセンター・獣医師)

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