4.ニュンバヤサナー(芸術の家):ジョージ・リランガとフランシス・パトリック・イマンジャマ

 


ジョージ・リランガ

“食べ物と水を求めての長い旅”
SAFARI YA MBALI YA KUTAFUTA CHAKULA NA MAJI KUTOKA KIJIJI CHA MBALI WOTE WANAFURAHA

ハディージャ
エリナ
サキナの
三人の主婦が帰ってきた
食べ物と水とたっぷり
持って
家族も 村の人たちも
大歓迎
彼女たちは
足どりも軽く帰ってきた
三人が助け合ったから
よい旅ができた
この荷物を持って帰ったら
家族がどんなに喜ぶだろう
彼女たちは大満足


バティック(ろうけつ染め)
112×91  cm
ジョージ・リランガ(George Lilanga,1934-2005)はタンザニア南部の出身のマコンデ人 。タンザニア国内にとどまらず、日本や欧米においても多数の個展・グループ展が開催され、作品が世界各地の美術館にコレクションされている、アフリカ現代アート界を代表する一人です。ティンガティンガ派の画家との接点もありましたが、彼自身は独自の路線を歩みました。奇妙な姿をしたシェタニをモチーフとし、彫刻、エナメル画、水彩画、版画、ろうけつ染めなど、多様な技法で作品を残しています。それぞれの作品に付けられた物語は、真夜中に眠っているリランガの夢の中でシェタニがやったことだそうです。

  
マコンデの人々が彫り出すのはシェタニだけではありません。多数の人が彫り込まれたこの作品はウジャマー と呼ばれるものです。ウジャマーとはスワヒリ語で「家族の連帯」などを表す言葉です。ウジャマーの彫刻には歴史的な出来事、神話、あるいは互いに助け合って生活している場面、あるいは家系図などの意味があると言われます。
ジョージ・リランガ
アフリカンブラックウッド

22×24×74 cm

今回の特別展にならぶ作品の作家には、ある特徴があります。それは美術に関する高等専門教育を受けてはいない、ということです。展示の彫刻作品はもともとマコンデの人々にあった文化が発展したものです。独学で絵を学んだ作家も多くいました。またタンザニアで重要な役割を果たしたのがニュンバヤサナー(Nyumba ya Sanaa:芸術の家)です。1972年、アメリカ人宣教師のジーン・プルイットがダルエスサラームに設立しました。ここに若手芸術家たちが集って研鑽し、時にはエッチングなどの技術的指導を受けました。さらにここにはギャラリーが併設され、作品を展示し販売する場所ともなっていましたが、2011年に幕を下ろしてしまいました。このニュンバヤサナーから、ジョージ・リランガやパトリック・フランシス・イマンジャマといったアーティストが育っていきました。

 
いずれも フランシス・パトリック・イマンジャマ

エッチング/紙


上段左から
14×10 cm
30×24 cm
22×22 cm

下段
19×30 cm


イマンジャマ(Francis Patrick Imanjama,1959-)はザンジバル出身。ダルエスサラームのゲーテ・インステチュート(ドイツ文化協会)で絵画を、ニュンバヤサナーではエッチング(銅版画)の技術などを学びました。カラーエッチングのほか、水彩画や写真などの作品も制作しています。タンザニア国内だけでなく、ヨーロッパなど国外での展覧会にも出品されています。


<< 3.マティアス・ナンポカが彫り出す不可思議なシェタニ
5.ティンガティンガ派の絵画 >>